千葉県をフィールドにして史料調査や研究活動を行っている「房総史料調査会」会員10名が、関家の古文書をひも解いた「殿様が3人いた村」の著者一橋大学渡辺尚志教授の案内で、関さんの森を訪問しました。
森の会議室で、関美智子さんから、「今まで自然を守る活動をしてきたが、保存してきた古文書が注目を浴びてきたので、古い蔵とともに古い文化の保存にも力を入れたい」と歓迎のあいさつ。古文書調査の会員から、関さんの森での活動の概要について説明をしました。
屋敷内の巨木や蔵を見たあと、古文書が大量の保存されていた新倉の2階を調査。未だ整理されていない、大量の寺や神社の御札が興味を引いたようでした。
その後森のサロン内で保存されている古文書を手に取って調査していました。
(木下)
関家の蔵に保存されていた古文書は、「関さんの森・古文書の会」により3,000点余りに整理保存されました。古文書の整理保存作業を永年指導してこられた一橋大学渡辺尚志教授が、この度、『殿様が三人いた村~葛飾郡幸谷村と関家の江戸時代~』と題する1冊の本にまとめられました。11月5日には、かつての幸谷村の地区にある幸谷ふれあいホールで、出版を記念する報告会が開かれました。
開場前に参加者が建物の外に並び、午後1時の開場と共に狭い通路の受付は混雑。参加者名簿に記録して、早速本を買い求める人の列が続きました。
開始を待つ幸谷ホールの参加者。当日は松戸市内を中心に80名が来場、入りきれない人は別室のモニターテレビで講演を聞きました。
主催者の「関さんの森エコミュージアム代表」、関家の当主である関美智子氏の挨拶の後、著者である渡辺氏による「葛飾郡幸谷村と関家の江戸時代」と題する特別講演が行われました。渡辺尚志氏は日本近世史・村落史研究の第1人者。膨大な関家古文書の中から、現代社会の基礎を築いた江戸時代の村人たちの営みを、具体的にひも解きながら、①幸谷村に殿様が3人いたわけ、②村人の江戸川洪水とのたたかい、③村人の没落を防ぐセイティーネットの3点について分かり易く説明して下さいました。
特別講演の後は、古文書の保存作業を担当してきた古文書の会の会員4名による報告。江戸時代の幸谷村の様子、五人組帳という村掟と村人のくらし、旗本曲淵氏への年貢納入の実態、年貢以外に村が負ったの負担等について報告がありました。
著書は、発行所:崙書房出版 ふるさと文庫(新書版256頁)。
定価1300円(税別)で東葛地域の書店で発売中です。
9月の定例会は、参加者16人。作業班を中心に、むつみ梅林境界の杭打ち。後日、ロープを張る予定です。
女性陣は、新設道路・交差点の花壇に、テランセラ70株とジニア40株を植えつけました。
連休中しばらくは晴天が続くということで、たっぷり給水しました。
このほか、屋敷林(旧こどもの森)を一周して、幸谷小学校のこどもたちが観察する樹木をチェックしたり、見学者を案内したり、会議をおこなったりしました。
さて、この日に関さんの森で見つかった生き物たちをいくつか紹介します。
まずは、ニホンカナヘビ。
夏の間、高原ですごしていたアキアカネが平地にもおりてきました。
関家を囲む生垣では、アオスジアゲハの幼虫がいました。下の写真は3齢あたりですが、2齢や1齢、卵も見つかりました。
この派手な色合いの生き物は、ビロードハマキといを蛾です。
コガタコガネグモがいました。
写真は撮れませんでしたが、ムラサキツバメという蝶がいたことを書きとどめておきます。ムラサキツバメは温暖化に伴い北上傾向にある昆虫です。
なお、森のサロンでは、古文書の会の人たちが、関家の蔵から見つかった古文書のリストを精査していました。
関さんの森エコミュージアムが発足して5周年。この日は、関さんの森・古文書の会による、講演と報告会~江戸時代の幸谷村のくらしと文化~が開催されました。
会の前半は、渡辺尚志氏(一橋大学大学院社会学研究科教授)による、「江戸時代の村と関家文書」と題した講演。江戸時代の村において、百姓たちがどのような生活を営んでいたかという話でした。
江戸時代の百姓といえば、武士に支配され、教養とは無関係で惨めな生活を強いられていた弱者というイメージがあります。しかし、当時の村は、名主・組頭・百姓代を中心に、人々が共同体として結集する中で、生活水準は確実に向上し、農作業の合間に俳諧や生け花を楽しむ人たちも現れたそうです。
江戸時代の村を知ることは必要で、環境問題や高齢化の問題などに直面している私たちは、江戸時代の村から学ぶべき点もたくさんあると、渡辺先生は言います。
後半は、会員による報告で、テーマと報告者を列記します。上の写真は、蔵の中のあった古文書のようすです。
(1)関家文書の調査経緯…木下紀喜
(2)関家文書の調査概要とこれまでの成果…伊勢真志
(3)幸谷地域の祠・神社・寮そして寺院…田嶋昌治
(4)関家に残る「幸谷村御年貢勘定目録」…棚井行隆
(5)相給の村・領主曲淵・江戸から明治への税の変化…東闊
(6)幸谷村の医療事情…田引勢郎
(7)古文書と離縁状(三くだり半)…金井勝忠
上の写真は、天保14年(1843)の「御年貢勘定目録」です。
関家は代々、幸谷村の名主をつとめていました。その関係で、蔵には年貢目録をはじめ、たくさんの文書が残っています。現在までに約2000点の文書が目録化されています。調査の経緯やその概要、さらに文書を読み解く中でわかったことについての報告がありました。
上の写真は、関家に残る「諸薬妙方」です。さまざまな経緯で関家が世話をすることになった医師から伝授された、薬の調合方法に関する文書です。
上の写真は「離縁状」、いわゆる「三くだり半」です。文書を読むと、単に夫が妻の離縁を申し渡すものではなく、再婚許可証であることがわかります。当時の幕府法によると、離縁状無しに嫁いだ女性は、髪を剃り、親元へ帰されたそうです。また、離縁状を出さずに後妻を迎えた男性は、所払いになったそうです。
以上、3時間の講演・報告会の、ごく一部を紹介しましたが、とても濃くて興味深い内容でした。いままでに読み解いた文書はごく一部です。これからも作業が進む中で、当時の人々のくらしや文化についての理解が進むことでしょう。
11月17日(日)に開催される、古文書についての講演・報告会の準備をおこないました。
下の写真は、当日使用するパワーポイントを確認しているところです。
当日は、古文書の会の指導をお願いしている、渡辺尚志(一橋大学教授)の講演があり、その後、会員による発表と続きます。
関さんの森 古文書講演・報告会
~江戸時代の幸谷村のくらしと文化~
江戸時代から続く松戸市幸谷の関家の蔵には大量の古文書が未整理の状態で保存されていました。そこで「関さんの森・古文書の会」が、渡辺尚志一橋大学教授の指導も得て、古文書の整理・保存作業を始めました。これら古文書の調査過程や、解明できたことについて、講演・報告会を開催いたします。
・日時:2013年11月17日(日)14:00~17:00開場13:30
・場所:幸谷ふれあいホール、松戸市幸谷613-1、JR新松戸駅徒歩2分
・定員:先着50名 申し込み不要 当日受付
・参加費:300円
・主催:関さんの森エコミュージアム
・後援:松戸市教育委員会(予定)・月刊新松戸
・問合せ:電話090-9156-4960(木下)
・なお、この日は定例作業および見学ガイドがありますが、どちらも12時までで終了といたします。午後の見学ガイドは無しとします。
関家屋敷内の桜が咲きはじめました。